思ったほど混乱を招かなかったこの制度ではありますが、中長期的に、今後じわじわと影響が出てくると睨んでいます。
今日はこの制度の『闇』について掘り下げたいと思います。
この制度を詳しく解説した記事はこちら
省エネ性能ラベル表示制度で住宅選びはどう変わる?
目次
建築コストへの直接的影響
コスト上昇要因
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「高性能断熱材」(※1)の使用義務化
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「省エネ設備」(※2)の導入必要性
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「性能評価費用」(※3)の発生
※1 高性能断熱材:熱損失を最小限に抑える高機能な建築材料
※2 省エネ設備:エネルギー消費効率の高い設備機器
※3 性能評価費用:省エネ性能を評価・認証するために必要な費用
1~3のどれもがこれまで一般的に使用されていた建築資材より高価格帯の商品になります。
これにより、建築時のコストだけでなく、維持・管理の際にかかるコストも上がります。
月々のランニングコストを下げても、トータル的にいかほどの効果があるものか・・・以下で予測はしていますが、まだ結論は出ていません💦
コスト上昇の試算
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一般的な戸建住宅で約3-5%の建築コスト増加
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集合住宅では規模に応じて2-4%程度の上昇
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「ZEH」(※4)対応の場合は最大10%程度の増加
※4 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス):年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロとなる住宅
建築コストは今後ますます上がると見込まれます。
物価も上昇するでしょうし、労務費も上がっていきます。
インフレそのものは日本経済の成長には必要不可欠ではありますが、その影響で恩恵を受ける人ばかりではありません。
恩恵を受けれない層が人口のどの程度の割合かはわかりませんが、この制度の導入で、消費者の選択の自由を奪われたという意味では、損失も多い気がしています。
インフレーションへの影響
短期的影響
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「建設物価」(※5)の上昇
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資材価格の高騰
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人件費の上昇
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評価・認証コストの転嫁
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※5 建設物価:建設に関連する資材・労務・サービスの価格指数
中長期的影響
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「エネルギーコスト」(※6)の低減効果
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光熱費の削減
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メンテナンスコストの最適化
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※6 エネルギーコスト:電気・ガス等のエネルギー使用に関する費用
生活レベルへの影響
以下の理由から、今後、持家を持てる人は限定されていくのではないでしょうか?
新築にしろ、中古にしろ、省エネ性能で住宅を選ぶということは、それなりの資金が必要になるからです。
買える層の人だけが、ランニングコストの軽減の恩恵を受けられるということになりませんか?😅
住宅取得層への影響
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「頭金」(※7)の増加
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必要資金の上昇
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住宅ローン借入額の増加
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※7 頭金:住宅購入時に必要な自己資金
家計への影響
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短期的負担
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住宅ローン返済額の増加
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初期投資の増大
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長期的メリット
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「ランニングコスト」(※8)の低減
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資産価値の維持・向上
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※8ランニングコスト:建物の運用に必要な継続的な費用
経済全体への波及効果
この制度による、プラスとマイナスの影響を以下の様にまとめました。
簡単に言うと、儲かる会社と儲からない会社にはっきりと2分化されるということです。
住宅省エネ基準に対応できる、もしくはそこに特化できるメーカーや業者しか生き残れないしくみを国が打ち出したように見えます。
中途半端なメーカーや、地方の小さな工務店に生き残る道があるのか、甚だ疑問です。
新聞やテレビでは報道されませんが、独占禁止法を完全に無視した政策の様に見えてしまうのは私だけでしょうか?
プラスの影響
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「グリーン産業」(※9)の成長
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新技術開発の促進
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関連産業の雇用創出
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※9 グリーン産業:環境配慮型の製品・サービスを提供する産業
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「省エネ技術」(※10)の進展
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技術革新の加速
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コストダウンの実現
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※10 省エネ技術:エネルギー消費効率を向上させる技術
マイナスの影響
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「住宅市場」※11の冷え込み
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新築着工件数の減少
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中古住宅市場への影響
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※11 住宅市場:住宅の売買・賃貸に関する市場全体
対応策と展望
とはいえ、国としては、世界に対抗できる経済的な競争力をつける意味でこの政策も必要なのかもしれません。
以下のような消費者にやさしい政策も併せて行っていますので、わたしたちも少しづつ適応していかないといけないと思います。
適応できない場合、「the end」しか選択肢はありません。
政策面での対応
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「住宅ローン減税」(※12)の拡充
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「省エネ補助金」(※13)の充実
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「グリーン投資減税」(※14)の活用
※12 住宅ローン減税:住宅ローンの返済額に応じた税額控除制度
※13 省エネ補助金:省エネ設備導入時に受けられる補助金
※14 グリーン投資減税:環境配慮型設備投資への税制優遇措置
市場の適応
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段階的な基準引き上げ
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技術革新による価格低下
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新たなビジネスモデルの創出
まとめ
省エネ性能ラベル表示制度の導入は、建築コストの上昇を通じてインフレ圧力となる可能性がありますが、以下のような効果が期待できます。
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エネルギー効率の向上による家計負担の軽減
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環境配慮型産業の成長による経済活性化
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技術革新を通じたコスト低減
これ以外にも、エネルギー効率を上げることによって、家の中での寒暖差が緩和され、直接的にヒートショックの減少などの健康面での効果も期待できます。
これにより、健康年齢は今以上に長くなったりもするのかしないのか・・・
これもまた、答えは出ていませんが、暮らしやすくなることは確かです。
ただし、私個人としては、これに「地域性」や「選択性」を取り入れてほしかったというのは否めません。
ダレトク?
一般消費者や、地方の中小企業でないことはたしかですね。
今日の記事はここまで。
次回は、わたしが考えるSDGSについてまとめたいと思います。
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