先日、オランダに留学中の知人が一時帰国し、お土産をいただきました。
オランダの伝統菓子「ストループワッフル」です。
薄いワッフル生地の間に、濃厚なキャラメルがサンドされたこのお菓子。
一見すると素朴ですが、実はその背景にはオランダという国の「合理主義」が色濃く反映されていました。
目次
一枚のワッフルが問いかける「時間の質」
彼との対話の中で浮かび上がったのは、大袈裟にいうと、現代社会を席巻する「タイパ(タイムパフォーマンス)」という概念の歪みと、私たちがこれから直面する「経験格差」という課題でした。
今回は、この一枚のワッフルを入り口に、現代人が陥りがちな「効率の罠」について個人的な気づきと考察をまとめたいと思います。
オランダの特性をストループワッフルから読み解く。
彼のおすすめはブラックコーヒーと共に楽しむ食べ方。
コーヒーカップの上にこのワッフルをのせて、少し温めてから食べるのが本場流らしいです。
もちろん言われた通りの食べ方で、おいしくいただきましたし、その間、短い時間ではありましたがとても興味深いお話をたくさんすることができました。
彼曰く、
オランダに美味いものなし!
なのだそうです😆
そんななか、
唯一!美味しいのが、この「ストループワッフル」なのだそう。
軽い見た目に反して、持ってみると思いの外ずっしりと重く、食べてみるとしっかりと甘い。とても食べがいのあるお菓子です。
しかも、それにはちゃんと理由があるそうで、それはオランダの国土にまつわる、なんとも信ぴょう性の高い理由でした。
オランダの「痩せた土地」が生んだ生存戦略
なぜ、オランダに美味しい食べ物がないのか。
そんな中、なぜこの「ストループワッフル」が生まれ、なぜ愛され続けているのか。
それは、オランダが”効率重視の国民性”だからだというのです。
彼がいうには、実はオランダの国土の多くは、もともと海抜ゼロメートル以下の湿地帯や海の底でした。それを何世紀もかけて排水し、干拓して作り出してきた「人工の土地」なのだそうです。
当然ながら、海を干し上げたばかりの土地は塩分が強く、作物が育ちにくい「痩せた土地」でした。この過酷な地理的条件が、オランダ人に「徹底した合理主義」を植え付けました。 自然に恵まれた肥沃な大地を持たなかった彼らは、限られた資源と狭い土地から、いかに効率よく利益(エネルギー)を生み出すかを考え抜くしかなかったのです。
この背景を知ると、いただいた「ストループワッフル」の見え方が変わりますよね!
薄い生地の中に凝縮された強烈な糖分とカロリー。
これは単なる嗜好品ではなく、厳しい環境下で最短・最小の労力で最大の結果を出すための、いわば「生存のためのタイパ」の結晶なのです。
食を「楽しむ」こと以上に、まずは「いかに効率よくエネルギーをチャージするか」を優先せざるを得なかった先人の知恵が、そこに凝縮されていました。
ここで驚いたのは、そこまでオランダの国民性を理解した上で、彼は「タイパ重視の生き方にはあまり共感できない」ということをおっしゃるのでした。
「タイパ信者?」
私は効率化が好きです。
二度手間は嫌いです。
AIも使います。
最短距離も探します。
仕事でも宿題でも学びでも遊びでも、目的を達成することと同じくらい、その達成までの道のりも、わたしにとっては重要だと思っているのです。
ある意味、わたしはタイパ信者だと自分では自負しており、彼との会話の中でそれを一定ものか迷い、彼のいう「タイパ」がどんなものなのか聞き出そうとするのでした。
タイパには2種類ある
安心してください。
彼がいう「タイパ」とは、どうやらわたしが考えていたものとは相反するもののようでした。
現代の若者はこのタイパを驚くほど重要視しているといいます。
たしかに、流行語にもなっていたように記憶しています。
それをわたしはたいして理解もせず、むしろいい傾向だなと思っていたんですが、実はその認識は誤っていたことが分かりました。
わたしが信奉している「タイパ教」とは、実はちがう教えで、言わば「異教徒」だったのです。
だからこそ、この友人とのタイパに対する意見が、当初食い違っていたんですね。
同じ言葉でもその用法は真逆と言ってもおかしくないと感じています。
ひとつめは、目的を達成するために、手段を効率化すること。
ふたつめは、費用や時間をかけるに見合うかどうかを図る指標。
以下、これを攻めのタイパと、守りのタイパと言い換えて深掘りしていきますね。
あなたはどっち?
ネットフリックスは倍速でみますか?
映画は事前にストーリーをチェックしますか?
ネトフリは2倍速で見る。
映画は事前にストーリーやオチまで調べて、面白そうだったら見る。
面白いと話題になっているものしか見ない。
という人が多いらしいです。
まさにこれが守りのタイパ人間の特徴ではないでしょうか???
たしかにわたしも、ネットフリックスはいくらか早くして見たりもします。ただし、セリフが理解できて、俳優の表情が読み取れる範囲で。デフォルトで見るのと変わらない成果を最短で得たいと思うからです。
映画はストーリーをわざわざ調べたりしません。
あらすじやタイトル、俳優や監督で見る見ないを決めたりはしますが、事前にストーリーやオチまで調べてみるかどうかを決めたりはしないんです。映画の面白さはストーリーやオチだけでは図れないかもしれないとも思います。
この差が、攻めと守りの差ではないでしょうか?
同じタイパでも2種類あると思いませんか?
おそらく、わたしはこれでいうところの「攻め」だし、きっと、わたしの友人も「攻め」なのではないかと思います。
ここまで考えて、私たちが相反していなくて良かったと胸を撫で下ろしたのですが、気になるのは、なぜ現代のタイパが守り重視になったのか、というところです。
情報化社会が加速させる「失敗への潔癖症」
さらに、(余計なお世話ですが)なぜ、これほどまでに「守りのタイパ」が浸透したのか、深ぼってみました。
その背景には、可視化されすぎた情報社会の弊害があるような気がします。
むかしは情報はテレビや新聞、あるいは自身の足で稼ぐものでした。
しかし今は、スマホを開けば他人の成功事例と失敗事例が洪水のように流れ込んできます。しかもリアルタイムで。
SNSによって「リアルタイム」で「正解」が提示されすぎているため、若者たちは「遅れたくない」「正解以外を選びたくない」という強迫観念に近い心理状態になるのかもしれません。
失敗がデータとして拡散される恐怖、そして「やり直しが効かない」という空気感。さらにはすぐに正解が変わる。そんな恐怖に常に晒されていると感じていても不思議ではないですよね。
これらが、若者から「とりあえずやってみる」という蛮勇を奪い、代わりに「効率的な防御」を植え付けてしまった。これは個人の資質の問題ではなく、社会構造が生み出した一種の防御本能と言えるかもしれません。
「経験格差」という未来の格差
ここで、警鐘を鳴らしたいのが「経験の蓄積による複利効果」です。
突き抜けた成功を収めているインフルエンサーや若手起業家たちは、一見するとタイパを極めているように見えます。しかし、彼らの裏側を覗けば、異常なほどの「試行錯誤(=無駄)」を繰り返しているかもしれません。彼らは、リサーチにはタイパを求めますが、実行フェーズでは誰よりもリスクを取り、泥臭い検証を行っています。 つまり、「成功者は攻めのタイパで時間を浮かせ、その浮いた時間を“有益な無駄(挑戦)”に再投資している」のです。
対して、守りのタイパに終始する人は、浮いた時間でさらなる消耗回避(動画視聴や受動的な消費)を行います。この「時間の再投資先」の差が、5年後、10年後の「経験格差」として決定的な違いとなって現れるとしたら・・・。
失敗体験がないということは、危機管理能力が育たず、想定外の事態に弱い人間を作るリスクを孕んでいます。短期的な効率は良くても、人生という長期スパンで見れば、最も「タイパの悪い」生き方になりかねないとも考えられます。
これはある意味、ホラーですよね😱
時間はケチっちゃダメ。
タイパ重視で時間や手間を惜しんで、簡単にできることや、届きそうなものにだけ手を伸ばす、そんな人はそれ以上のものを得ることは決してできません。
時間をケチってチャレンジしない選択をすることは、自分の経験値を増やさない選択をするということ。ケチはダメ!
でも、
時間は、誰にとっても有用で大切な資源です。
だから節約や効率化は大事です。節約しよう!
これが、私の考える、攻めのタイパです。
オランダ人は攻め?守り?
では、くだんのオランダ人はどちらなのでしょう?
効率よくカロリーを摂取するオランダの国民性は、一見、守り型に見えるような気がします。
でも・・・
タイパ重視のオランダ人も、ブラックコーヒーの上でワッフルが柔らかくなるのを待つではないですか。
効率重視のオランダ人ですら、カロリー摂取の効率のいい食材ではあるものの、ワッフルを美味しく食べるための時間を使っているとわかります。
つまり、オランダ人もある意味、攻めのタイパ型の面も持ち合わせているということではないかと思うのです。
完璧な守りのタイパ型なら、きっと冷たいガリガリのワッフルをそのままいただくと思います。
つまり、どちらがいい悪いではなく、どちらも使い分けられたらもっといいよね?とも、思うわけです。
ワッフルが柔らかくなるのを待つ、ほんの数分を「無駄」と呼ぶか、「豊か」と呼ぶか。
そこに、その人の生き方が出る気がします。
あの日、わたしと友人はこのワッフルをコーヒーの湯気で温めながら語り合い、おしゃべりしながらゆっくりといただきました。
わたしたちは互いにタイパについての初見は意見が相違していたものの、思いは一緒だったということですね。
そして、彼は、きっとこの経験格差についても理解があり、おそらく、ご自身はこれからたくさんのことにチャレンジし、知識や経験を増やしていかれるんだろうと思います。
彼がこれからどんなことにチャレンジするのか、興味津々です。
いいお題をありがとう🥰
またおしゃべりしたいものです。
今日の記事はここまで。
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