不動産を購入してしばらく経ったある日、見知らぬ封筒が届く。差出人は「○○県税事務所」。開封してみると、聞いたことのない税金の請求書。
これが「不動産取得税」です。
空き家を購入して大家さんをめざす方の多くが、この税金の存在を知らないまま物件を取得しています。さらに厄介なのが「軽減措置があると聞いた」という情報を信じて、実際には受けられないケースで損をしてしまうことです。
この記事では、これから空き家を活用して大家さんになりたい方に向けて、不動産取得税の正しい知識を体系的に解説します。
目次
不動産取得税とは
一度だけかかる「都道府県税」
不動産取得税とは、土地や建物を売買・贈与・新築などで取得したときに、一度だけかかる税金です。毎年課税される固定資産税とは異なり、物件購入という「イベント」に対して一回限り発生します。
💡 ここを押さえよう
固定資産税(毎年かかる)と不動産取得税(取得時の一回限り)は別物。「税金が2種類ある」と覚えておきましょう。
課税される「取得」と課税されない「取得」
不動産の取得には、課税されるケースとされないケースがあります。大家さんとして特に知っておくべき点は「相続は非課税」という点です。

空き家を「買う」「競売で取得する」「贈与で受け取る」場合はすべて課税対象です。一方、親が亡くなって実家を相続した場合は非課税になります。
税率と計算の基本
税率は地方税法で全国一律に定められています。都道府県が独自に変えることはできません。

計算式は「固定資産税評価額 × 税率」が基本です。固定資産税評価額は実際の売買価格より低くなるケースが多く、一般的に売買価格の5〜7割程度が目安と言われています。
担当窓口は物件所在地を管轄する「都道府県税事務所」です。市区町村役場ではありません。取得後おおむね4〜6か月後に納税通知書が届きます。
軽減措置の種類と条件【全国共通ルール】
不動産取得税には、一定の条件を満たすと税額が大幅に下がる「軽減措置」があります。骨格となるルールは全国共通ですが、細かな運用や必要書類は都道府県によって異なります。
建物の軽減:課税標準からの控除
住宅を取得した場合、固定資産税評価額から一定額を控除した金額に税率をかけて税額を計算します。控除額は取得した住宅の種類・築年数によって変わります。
新築住宅の控除額

床面積の要件:1戸あたり50㎡以上240㎡以下(賃貸アパート等は1戸あたり40㎡以上240㎡以下の場合もあり)。
中古住宅(既存住宅)の控除額

中古住宅の軽減を受けるには、1982年1月1日以降に新築された建物(新耐震基準)であることが原則条件です。旧耐震基準の建物は耐震基準適合証明書などが必要になります。
土地の軽減:宅地特例と税額控除
住宅用の土地を取得した場合は、建物とは別に土地についても軽減があります。
①宅地の課税標準
宅地(住宅用土地)を取得した場合、固定資産税評価額を1/2にした金額を課税標準とします。これは新築・中古・賃貸用問わず適用されます。
②住宅用土地の税額控除
建物の軽減が適用される場合、土地の税額からさらに以下のAまたはBのいずれか多い金額を控除できます。
A:45,000円
B:土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2 × 住宅の床面積の2倍(上限200㎡)× 3%
なお、土地と建物の取得タイミングが異なる場合は期限要件があります。土地を先に取得した場合は3年以内に住宅を新築、住宅を先に取得した場合は1年以内に土地を取得することが条件です。
⚠️ 注意
軽減措置は自動で適用されません。申告が必要です。申告期限や必要書類は都道府県によって異なるため、物件取得後は速やかに所在地の都道府県税事務所に確認してください。
大家さんが知るべき最重要ポイント:「投資用・賃貸用」は軽減が受けにくい
ここからが、この記事の核心です。大家さんをめざす方が最も誤解しやすいポイントを正確に解説します。
なぜ勘違いが起きるのか
「不動産取得税には軽減措置がある」
「1,200万円控除できると聞いた」
この情報自体は正しいのですが、落とし穴があります。
中古住宅(空き家)の軽減措置は、原則として「自分が住むための住宅」を対象に設計されています。つまり、空き家を購入して人に貸す(賃貸用・投資用)場合は、この軽減措置の対象外になる場合が多いのです。
⚠️ 大家さんがはまる落とし穴
「軽減措置があるから取得税は安くなる」と思い込んで購入後に通知書を見てびっくり——というケースが後を絶ちません。中古の空き家を賃貸用に買う場合は、軽減が受けられないことを前提に資金計画を立ててください。
居住用と賃貸用の違いを整理する

例外:都道府県によって扱いが違う場合がある
「賃貸用は一切ダメ」というわけではなく、都道府県によっては賃貸住宅を軽減の対象に含める運用をしているケースもあります。この「どこまで賃貸用を認めるか」は、都道府県ごとの差が最も大きい部分です。
そのため、物件を取得する前に、必ず物件所在地を管轄する都道府県税事務所に「賃貸用として購入するが軽減を受けられるか」を確認することが重要です。
ただし、新築の賃貸用不動産は軽減を受けられる
前章で「賃貸用の中古住宅は軽減が受けにくい」とお伝えしましたが、新築の賃貸用不動産はこの限りではありません。
新築賃貸住宅は1,200万円控除の対象
新築住宅の1,200万円控除は、「自己居住用」という縛りがありません。新築アパートや新築賃貸住宅として建てた場合でも、条件を満たせば軽減措置が適用されます。通知書が届かない場合の対処法
✅ 新築賃貸住宅で軽減が受けられる主な条件
● 1戸あたりの床面積が50㎡以上240㎡以下(賃貸アパートは40㎡以上240㎡以下の場合あり)
● 居住用途の住宅であること(店舗・倉庫等は対象外)
● 申告期限内に都道府県税事務所へ申告すること
中古と新築でここまで違う

身の丈大家®として小さく始める場合、中古の空き家を購入して賃貸に出すケースが多いと思います。その場合は「軽減は受けにくい」ことを前提に計画を立て、新築アパートを建てる場合は「軽減を受けられる」可能性が高いと覚えておきましょう。
新築賃貸の不動産取得税:計算イメージ
例)固定資産税評価額1,500万円の新築アパート(1戸)を取得した場合
軽減なし:1,500万円 × 3% = 45,000円
軽減あり:(1,500万円 - 1,200万円)× 3% = 9,000円
差額:36,000円の節税
戸数が多いほど、軽減の効果は大きくなります。新築アパートを検討している方は、必ず申告を忘れないようにしてください。
新築賃貸の不動産取得税の詳細については、別記事で詳しく解説しています。
申告と納付:大家さんが知っておくべき実務
申告と納付は別物

軽減を受けるには申告が必要です。申告せずに通知書を待っているだけでは、軽減が反映されないことがあります。申告期限は都道府県によって異なるため、取得後すみやかに物件所在地の都道府県税事務所に確認してください。
通知書が届かない場合
取得から6か月〜1年経っても届かない主な原因は次の4つです。
・軽減措置の適用で税額が0円になり通知書が発送されなかった
・登記簿上の住所(旧住所)に送付されて届いていない
・共有名義の場合、代表者住所にのみ送付されている
・評価の事務処理に時間がかかっている
⚠️ 放置は厳禁
「届かないから払わなくていい」は誤りです。1年経っても届かない場合は、物件所在地の都道府県税事務所に問い合わせてください。延滞金が発生するリスクがあります。
滞納リスク:大家さんこそ注意が必要
複数物件を管理する大家さんほど、通知書の管理が煩雑になりがちです。滞納した場合の流れと金銭的ダメージを把握しておきましょう。
滞納後の流れ
期日超過 → 約20日後に督促状が届く
督促状到着後10日以内に未納 → 法律上、財産差し押さえが可能な状態に
預金・不動産が差し押さえ・売却されて税金に充当
延滞金の仕組み

元の税額が50万円なら、1年放置すると延滞金だけで7万円超になります。投資物件そのものが差し押さえになれば大家業どころではありません。支払いが困難な場合は、放置せず早めに都道府県税事務所に相談してください。分割納付(最長6か月程度)が認められる場合があります。
まとめ
この記事でお伝えしたことを整理します。
不動産取得税は取得時に一度だけかかる都道府県税。相続は非課税
税率は全国一律(住宅用3%・それ以外4%)。担当窓口は都道府県税事務所
軽減措置の骨格は全国共通だが、細部の運用は都道府県によって異なる
中古の空き家を賃貸用に購入した場合、軽減措置は原則受けにくい
新築の賃貸用住宅は、床面積要件を満たせば1,200万円控除が受けられる
軽減は自動適用されない。申告が必要。期限は都道府県税事務所に確認
滞納すると年率最大14.6%の延滞金と差し押さえリスクがある
中古の空き家で大家さんをめざす場合は「軽減は受けにくい」を前提に資金計画を立て、新築アパートを建てる場合は「申告すれば軽減を受けられる」と覚えておきましょう。いずれの場合も、物件取得前に物件所在地の都道府県税事務所に確認するのが最善策です。
よくある質問(FAQ)
Q. 空き家を賃貸用に購入した場合、不動産取得税の軽減は受けられますか?
A. 多くの場合、軽減措置は自己居住用が前提のため、投資用・賃貸用では受けにくいのが実情です。ただし都道府県によって取扱いが異なるため、物件所在地の県税事務所へ事前に確認することを強くお勧めします。
Q. 不動産取得税の申告はいつまでにすればいいですか?
A. 都道府県によって異なります。期限を過ぎると軽減措置が受けられない場合もあるため、取得後は速やかに手続きしましょう。
Q. 納税通知書が届かない場合はどうすればいいですか?
A. 軽減措置が適用されて税額が0円になっているか、登記簿上の住所に届いていない可能性があります。取得から1年経っても届かない場合は、物件所在地の都道府県税事務所に問い合わせてください。放置すると延滞金が発生するリスクがあります。
Q. 不動産取得税は市区町村に払うのですか?
A. 違います。不動産取得税は都道府県税で、物件所在地の「都道府県税事務所」が担当です。固定資産税(市区町村担当)とは別の窓口になります。
Q. 土地と建物を別々に取得した場合、不動産取得税はどうなりますか?
A. それぞれに不動産取得税がかかります。ただし取得タイミングによっては土地の軽減措置が受けられる場合があります。土地先行の場合は3年以内に住宅を新築、住宅先行の場合は1年以内に土地を取得することが条件です。
今日の記事はここまで。
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※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断を保証するものではありません。具体的なケースについては、物件所在地の都道府県税事務所または専門家にご確認ください。


